「保護メガネを着けて」と何度言っても、気づけば額に上げたままで装着するそぶりもない・・・。そんな光景に頭を抱える担当者も多いはずです。

本記事では、飛来物災害の正体と、明日から現場で使える防止策をお伝えします。


▼現場の安全について、参考記事をご紹介。以下も是非ご覧ください。▼


飛来物災害はなぜ起きる?「一瞬」と「油断」の正体

「飛来・落下」は、労働災害の事故の型の中でも常に上位に入る災害です。このうち「飛来」とは、作業中に物が勢いよく飛んできて人に当たることを指します。

研削といしの破片、はつり作業のコンクリート片、切断時の金属くず、張力のかかったワイヤーの跳ね返りなど、現場には飛来の危険があふれています。

厄介なのは、飛来物はとにかく速く、見てから避けることはほぼ不可能だという点です。小さな金属片でも目に入れば失明につながりかねません。労働安全衛生規則でも、切削くずなどが飛来するおそれのある機械には覆いや囲いを設け、作業者に保護具を使わせることが事業者に求められています。

ルールも保護具もあるのに、それでも事故が起きる背景には、以下のような心理が働くことが原因です。

  • 「数秒で終わるから」と保護具を省略してしまう
  • 保護メガネが曇る・汗で滑るなど、着けること自体がめんどくさい
  • ベテランに「保護メガネは?」と言いづらい雰囲気
  • 何年もケガをしていないから大丈夫という油断と慣れ


つまり、飛来物災害は「知識不足」よりも「分かっているけど、やっていない」から起きることが多いのです。

明日からできる!飛来物を「出さない・届かせない・守る」3段構え

対策は保護具だけに頼らず、3つの段階で考えるのが基本です。

  1. 出さない(発生源の対策)
    研削といしは使用前に亀裂や欠けがないか点検し、覆い(カバー)を外さずに使います。といしの取替えや試運転は、特別教育を修了した者が行うことも確認しましょう。工具の整備不良は、飛来物の大きな発生源です。

  2. 届かせない(遮る・離す)
    飛散防止の衝立やシートを設置し、作業場所の周囲に立入禁止の範囲を設けます。「作業者本人は保護具を着けていたのに、通りがかった人に破片が当たった」という事故は珍しくありません。

    周囲の人を守る視点が欠かせません。作業前のKY活動(危険予知活動)で「破片はどっちに飛ぶか」「その先に誰がいるか」を具体的に話し合っておくと、衝立の向きや立入禁止の範囲が自然と決まります。

  3. 守る(保護具の着用)
    保護メガネ、防災面、保護帽、厚手の作業服などを、作業内容に合わせて選びます。特に研削やはつりでは、保護メガネと防災面を組み合わせると顔全体を守れます。

ポイントは、1.出さない(発生源の対策)と2.届かせない(遮る・離す)を先に対策を進めることです。

現場ではつい「保護メガネさえ着けさせればいい」と考えがちですが、保護具が活躍するのは「事故の一歩手前」です。発生源と飛散経路の対策が甘いままでは、どれだけ指導しても事故は防ぎきれません。


保護具が定着する現場の仕掛け

それでも保護具の着用は、最も手を焼くテーマです。「着けろ」と繰り返すだけでは、現場はなかなか変わりません。定着させるには、環境を整えること、言いやすい現場の雰囲気の両方が必要です。

  • 着け心地の良いものを選ぶ
    曇り止め加工や、メガネの上から掛けられるタイプなど、作業者の声を聞いてもっとも作業者に適した保護具を選定する
  • すぐ手に取れる場所に置く
    グラインダーの横に保護メガネを掛けておくなど、「取りに行くのが面倒」をなくす
  • 作業主任者・職長から率先して着ける
    上長が着用しない現場では、若手も着用しない
  • 声をかけるルールを決める
    「保護具の未着用などを発見したら立場に関係なく声をかける」と朝礼で宣言し、現場の中でルール化し浸透させる
  • ヒヤリハットを共有する
    「メガネに破片が当たったけど怪我せず助かった」のような身近な実例を共有する

注意する側も「言ったら嫌な顔をされるかも」と悩むものです。だからこそ、個人の勇気に頼らず、声かけを当たり前にする仕組みを作ることが担当者の役割です。うまく着けていた人を「いいね」と認める一言も、習慣化を後押しする大きな力になります。

まとめ

飛来物災害は一瞬で起き、取り返しがつきません。発生源・飛散経路・保護具の3段構えで、現場を少しずつ変えていきましょう。作業主任者と手を組み、「声をかけ合える現場」を一緒に築いてください。