安全に労働できる環境を提供することが、事業者の責務であるとすれば、労働者も安全に配慮をしたうえで労働をする義務があります。労働者には守られるべき権利もありますが、同時に守るべき義務も発生することを理解しておく必要があります。

安全衛生に関して労働者の守るべき義務とは

事業者側から課せられている義務については「◯◯をしてはいけない」「△△をしなければならない」など、決められていることを守らなかったことが原因で労働者が被災した場合には、必ずしも労働者側が100%の損害賠償を、事業者に対して請求出来る保証はありません。そればかりか、安全への配慮を怠った場合に関しては処罰をされる場合もあります。

労働現場における安全衛生に関する規制は、労働衛生法あるいは、業務上過失致死などを問う刑法などが対象となりますが、一般的には労働安全衛生法の規制が適用されることが多くあります。

労働安全衛生法の多くは事業者側に義務を課していますが、たとえば労働安全衛生法第4条では

「労働者は労働災害を防止するために必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない」とされています。

事業者のみならず、労働者側も守るべき事項に違反するようなことがあった場合には、罰金に処するなど記載されている部分もあります。

健康診断を受けることも労働者の義務

先に、事業者側には安全配慮義務があると述べました。事業者側には労働者の健康状態を知っておく責務も課せられています。なぜなら労働者の健康状態に応じて、業務内容を考慮する必要があるからです。

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企業に課せられる『安全配慮義務』とは

労働安全衛生法66条第5項において

「労働者は、前各号の規定により事業者が行う健康診断を受けなければならない。ただし、事業者が指定した医師または歯科医師の行うこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときはこの限りではない」と規定しています。

尚、健康診断の実施に関しては以下のような判例が出ています。

会社が入社前及び雇入れ時の健康診断の結果を労働者に告知しなかったため、入社後1年間の生活上の配慮がなされなかったことによる労働者の心尖部肥大型心筋症の発症、増悪につき、会社は慰謝料支払い義務を追う(京都地平10.7.10)などがあります。

これは事業者側が責任を果たしていなかったことを認められて判例でしょう。安全への配慮は当然ですが、健康を維持することは労働者自身の問題だけでなく働いている会社にも大きな影響があることを意識する必要があります。

まとめ

安全に関して「絶対してはいけないこと」そして「必ずやらなければいけないこと」があります。日本では労働安全衛生法やこれに基づく労働安全衛生規則などで細かく安全基準が規定されています。また、各事業者ごとでも設備面や作業面において規則や指示が出ているはずです。

しかし、その規則、指示に反した行為(安全装置が装着されていない。保護具の着用がされていない。)などの状況があとを絶ちません。危険防止の基準として定められたルールは必ず守ることが、自分や家族、そして会社全体までも守る結果となるのです。