安衛法に定める危険物および有害物については、製造または取り扱いの過程で労働者に重度の健康障害を生じる化学物質等の製造等の禁止、製造等の許可、化学物質等の危険または有害性等の表示、安全データシートの通知および化学物質等の危険性・有害性等の調査により規制されています。

これらの規制により、化学物質の製造・流通、使用の各段階における安全性を確保しようとするものです。

製造等の禁止・許可について

①製造等の禁止

労働者に重度の健康障害を生じるものとして、黄りんマッチほか安衛法上に定める化学物質等については、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、または使用することが原則禁止となっています。

②製造等の許可

製造禁止物質に準ずる重度の健康障害を生じる有害性があるものとして、安衛令別表3第1号に掲げるジクロルベンジシンおよびその他、第一類物質を製造しようとするときは、予め、厚生労働大臣の製造許可が必要になります。

許可申請は、製造する物質ごと、かつ製造するプラントごとに、所轄労働基準監督署長を経由して厚生労働大臣に提出することになります。なお許可を受けた場合には、その製造設備を厚生労働大臣が定める基準に適合するように維持し、同基準に定める作業方法により製造しなければなりません。

化学物質等の危険性または有害性等の表示について

化学物質等による爆発火災や健康障害を防止するため、メーカー、流通事業者に、容器等に一定事項を表示すべきことを義務付けしています。

①表示対象物

表示対象物については、容器に入れまたは梱包して、譲渡し、または提供する者は、構成労働者令で定めるところにより、その容器または包装に一定事項を表示しなければならない。

表示事項は①名称、②人体に及ぼす作用、③貯蔵または取り扱い上の注意、④表示する者の指名(法人にあっては、その名称)、住所および電話番号、⑤注意喚起語、⑥安定性および反応性、⑦ピクトグラム表示(絵表示)となっています。これらの表示については、JISZ7253に準拠した記載を行えば、表示制度を満たすと規定されています。

②表示他使用物を容器以外の方法で譲渡または提供する者

表示対象物を、容器以外の方法で譲渡、提供する者については、上記①に記載する事項を記載した文書を、相手方に事前交付する義務があります。

安全データシート(以下「SDS」)の通知

①SDS通知対象物

SDSは、化学品の安全な取扱いを確保するために、化学品の危険有害性等に関する情報を記載した文書です。事業場間で化学品の取引をするときに提供し、化学品の危険性・有毒性や適切な取り扱い方法に関する情報を提供することにより、供給側からユーザー側に伝達するものです。SDSは、ユーザーがリスクアセスメントを実施するとき、取り扱う時に有益な情報となります。

②SDSの関係労働者への周知

事業者は、SDSより通知された事項を、当該物質を取り扱う作業場の見やすい場所に、掲示等する方法により取り扱う労働者に当該物質の内容を周知させなくてはなりません。

化学物質等の危険性・有害性等の調査

実施対象等

規模・業種を問わず、事業場は化学物質等の危険性または有毒性の調査を実施し、法令に基づく措置を講じなければならず、その他のリスク低減措置を講じるように努めなければなりません。混合物においては、裾切値がありますが、使用量の裾切値はないため少量でも実施対策をする必要があります。

実施時期等

リスクアセスメントは、調査対象物を製造し、または取り扱う業務ごとに、適切に実施する必要があります。厚生労働省は、中小企業が簡単にリスクアセスメントに取り組めるように「コントロール・バンディング」を公表しています。実施時期は次のとおりです。

ア)SDSの対象物を原材料等として新規に採用し、または変更するとき。
イ)調査対象物を製造し、または取り扱う業務に係る作業の方法または手順を新規に採用し、または変更するとき。
ウ)調査対象物による危険性または有害性等について変化が生じるおそれがあるとき