健康診断は、事業者側の責任において労働者の健康状態を把握し、適切な現場配置や作業内容を割り振ることと、労働者個人の健康管理を行うことを目的として実施されます。
また、労働者の健康状態を把握することで、事業者側は作業環境管理、作業環境そのものに問題がないかを把握し、改善につなげることも重要です。
健康診断には、一般健康診断、有害業務にかかる特殊健康診断、都道府県労働局庁が指示する臨時の健康診断、行政指導による特殊健康診断があります。
労働者の心理的な負担の程度を把握するためのストレスチェック制度は、労働者の心理的な負担の程度を事業主が把握することで、労働者自身のストレス感度を促進するとともに、チェック結果を元に職場環境の改善につなげていくことも大きな目的とされています。
健康診断とストレスチェックに関する要点
■健康診断の実施は事業者に義務付けられており、実施に関する費用は事業者負担となります。
■労働者は事業者が実施する健康診断を受ける義務があります。
■労働者はストレスチェックを受けることを義務付けられていません。ただし、すべての労働者が受けることが奨励されています。
■ストレスチェックの集団分析の結果により、職場の環境改善が期待できます。
一般健康診断の種類について
ここでは、もっとも基本になる健康診断の「一般健康診断」の種類について説明していきます。
肩入れ時健康診断とは
肩入れ時健康診断とは、事業者が常時使用するとされる労働者を対象にして実施する健康診断を指します。(常時使用する労働者)の定義は以下①と②の要件を満たすものであり、これらの労働者に対しては漏れなく健康診断を実施することが必要です。
①期間の定めのない労働契約により使用される労働者(期間の定めのある労働者で、契約期間が1年以上である者、契約更新により1年を超えて引き続き使用されることが見込まれる者も含む)
②同種の業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間の4分の3以上の者
定期健康診断とは
常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に健康診断を実施することが義務付けられています。
特定業務従事者の健康診断とは
多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務等(安衛則13条1項3号に掲げる業務)に常時従事する労働者に対し、当該業務へ配置換えの際および、その後6ヶ月以内ごとに1回、定期に健康診断を実施しなければならない(安衛法45①)
ストレスチェックについて
ストレスチェックの対象事業場および、対象労働者については以下が定義されています。「規模50人以上の事業場は、常時使用する労働者についてストレスチェックを実施しなければなりません(50人未満は当分の間、努力義務)」
ストレスチェックの実施項目について
<<必須検査項目>>
①職場におけるストレスの原因に関する調査
②ストレスによる心身の自覚症状に関する各項目
③職場における他の労働者による支援状況
ストレスチェックの実施には以上の3点を含める必要があります。なお、ストレスチェック指針(平27.4.15 心理的な負担の程度を把握するための指針公示1)においては、職業性ストレス簡易調査票(57項目)の使用を奨励しています。このチェックは1年に1回、定期実施します。
ストレスチェックの結果通知と報告について
ストレスチェックの結果については、検査を実施した担当医師から労働者に、遅滞なく通知をすることとなっています。通知を受けた労働者は、その結果をもってストレスに対してセルフケアに努めることが求められます。
尚、これらの結果については、労働者本人の同意なく事業者に提供することはできません。
常時50人以上の労働者を使用する事業場に関しては、1年以内ごとに1回、定期的にストレスチェック検査結果等報告書を所轄の労働基準監督署に提出することが義務付けされています。
ストレスチェック集団分析の実施と効果について
業務に関するストレス判定図を用いて、集団ごとのストレス状況を把握することができます。集団ごとの集計・分析は個人が特定されないことから、個別に労働者の同意を取らなくても事業者側が結果を取得可能となっています。
ただし、集計および分析有効データの数が10人を下回る場合においては、当該集団のすべての労働者の同意が必要とされています。
集団分析の実施・分析は努力義務とされていますが、ストレスチェックを職場改善につなげるきっかけとなるため、事業主はこれらの結果を活用して職場をよりよくすることに注力するよう求められています。
ストレスチェック実施義務者が負う義務についてよくある具体例を、1分で読める記事にまとめています。