熱中症は高温多湿な環境下において、体内の水分と塩分のバランスが崩れ、体温の調整機能が上手くいかなくなり、発症する障害のことを指します。
熱中症の主な症状について
主な症状としては、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快感・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感・意識障害・痙攣・手足の運動障害等が代表的なものとしてあげられます。尚、最悪の場合には死に至るケースもあることから、注意が必要です。
WBGT値(暑さ指数の活用)
黒球式熱中症指数計
働く環境においてはWBGT値の低減に務める必要があるとされています。WBGT(湿球黒球温度計。単位は℃)値とは、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数(次の①および②により算出)です。
①屋内、屋外で太陽照射がない場合
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度
②屋外で太陽照射がある場合
WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
作業場所には、WBGT測定器を設置するなどして、WBGT値を適宜監視しておくことが望ましいでしょう。特にWBGT予報値、熱中症情報等により、事前にWBGT値が基準値を超えることが予測される場合には、適宜測定をするように務める必要があります。
また、WBGT値の測定が行われていない場合でも、気温(乾球温度)および相対湿度を熱ストレスの評価を行う際の参考にすると良いでしょう。
建設業等の熱中症予防対策について
熱中症多発業種に指定されている建設業などの事業者は、特に次の事項を重点的に注意する必要があります。
①WBGT予報値等から、WBGT基準値を超えることが予測される場合には、大型の扇風機などの使用や、単独作業を行わないなどの注意を行うとともに、適切な作業時間を設定するように務めること。
②睡眠不足、体調不良等は、熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、日常の健康管理について指導するほか、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
③水分・塩分の摂取確認表の作成。朝礼等での注意喚起等により、自覚症状の有無にかかわらず水分および、塩分を定期摂取させるように務めること。
④高温多湿作業場所で初めて作業をする労働者に対して、暑熱環境への順応期間を設けるなどの配慮を行うこと。
快適な現場環境を構築するための参考情報を1分で読める記事にまとめています。
建設業等での具体的な実施事項(例)
作業環境管理
作業場所またはその付近に、臥床できることができる冷房を備えた休憩所、または日陰等の涼しい休憩所を確保し、水分および塩分の補給を定期的かつ容易に行うことができるように配慮すること。また冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等、体を適度に冷やすことのできるような物品及び設備を設けること。
作業管理
・作業中は、作業者の様子に異常ないかを確認するため、管理者が頻繁に巡視を行う他、複数の作業者がいる場合には作業者同士で声をかけあう等、相互の健康状態に留意すること。
・透過性・通気性の良い服装(クールジャケット・クールスーツ等)を着用させること。また日光下では、通気性の良い帽子やヘルメット(クールヘルメット等)を着用させるほか、後部に日除けのたれ布を取り付けて輻射熱を遮ること。
健康管理
・安全衛生法66条の4及び第66条の5に基づき、健康診断で異常所見があると判断された場合には、医師等の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換を行うこと。
・作業場が糖尿病・高血圧症・心疾患・腎不全・精神神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患を有する場合、熱中症の発症に影響を与える恐れがあることから、作業の可否や作業時の留意事項について、産業医・主治医の意見を聴き、必要に応じて、作業場所の変更や作業転換等を行うこと。
労働衛生教育
作業を管理する者や、作業者に対して、特に次の点を重点とした労働安全衛生教育を繰り返し行うこと。また、当該教育内容の実施について、日々の注意喚起を図ること。
・自覚症状に関わらず、水分および塩分を摂取すること
・日常の健康管理
・熱中症が疑われる症状
・緊急時の救急処置及び連絡方法