安全衛生と言っても非常に範囲が広いものです。今回は作業慣れによる事故の予防や、職場外における事故、多くの作業者を悩ませる腰痛予防についての予防知識をお伝えします。

慣れた作業には特に注意が必要

有名なことわざで「猿も木から落ちる」というものがあります。どんな名人でも失敗することがあることの例えです。長年行ってきた作業に慣れて熟練してくると、つい基本動作を省略したり、ムリなこと、危険なことをやりがちです。熟練者として仕事を効率よく行うことは大事なことですが、自信が過信を生み、思わぬ事故や災害を引き起こすことがあります。

したがって、長年経験を積んだ慣れた作業を行う際にも、次のようなことを心がけることが大切です。

①経験にとらわれることなく、今の状況に合った判断と、作業手順などの基本を守る

②「安全に絶対は存在しない」という教訓を忘れることなく、安全作業の規定や手順は必ず守る

③間違った行為や作業方法は、自分だけでなく後輩なども見習ってしまう恐れがあることを肝に命じて間違った作業行為は行わない

④高齢になると、作業経験値に関係なく体力や平衡感覚、視力や聴力などの各感覚器官の機能が低下することを自覚し、無理せず作業を行う

職場以外での「不慮の事故」の予防と防止

不慮の事故や災害は職場の外でも多数起こっています。例えば、交通事故や火災、地震や暴風雨などの天災の危険は、身の回りにたくさん潜んでいます。

「不慮の事故」は社会生活における安全に対する指標となるものです。近年では労災事故による死亡者は年間約1,000人程度で推移しており、過去20年で見ると約2分の1程度に減少しています。ただ、不慮の事故による死亡者は過去20年から約4万人程と、ほとんど変わっていないのが現状です。

不慮の事故の種類では

・食物等の誤嚥やCO2ガス等による「不慮の窒息」・・・約8千人

・入浴等での「不慮の溺死」・・・約8千人

・階段等での「転倒・転落」・・・約9千人

・「交通事故」・・・約4千人

と続いています。

不慮の事故は家庭の中においても多数発生しており、交通事故を除いた死者数のうち約3万9千人が家庭内での事故で死亡しています。

不慮の事故予防と防止については、労働災害と同様に事故を予知・想定して「不安全行為を行わない」「不安全な状態を取り除く」ことで防ぐことが可能です。日頃から職場で行っているような良い安全管理や、安全活動を職場の外においても行うことで「不慮の事故」を予防することができます。

腰痛予防10則を習慣化しよう

腰痛は休業4日以上の業務上疾病の実に約7割を占めます。業務上疾病としての腰痛はほとんどが「ぎっくり腰」ですが、慢性の腰痛に悩む人は労働者の約3割にも及ぶとされています。作業場では腰痛対策について、厚生労働省通達の「職場における腰痛予防対策指針」に基づいて管理することが奨励されています。また、次の「腰痛予防10則」を参考に腰痛予防を習慣化することも重要になります。

①朝、布団やベッドで腰痛予防体操を行う

②仕事のはじめに準備体操を行う

③業務中、腰に違和感があったり疲労を感じたら腰を伸ばしたりほぐす

④不安定な姿勢で腰に力を入れないように注意する

⑤体力を過信しない、無理をしない

⑥腰への負担軽減のため作業手順を見直す

⑦作業に変化をつけ、できるだけ腰の緊張を取り除く

⑧重い荷物を持つ時には、ひと呼吸おいて持ち上げる

⑨夜、寝る前に腰痛予防の体操を行う

⑩普段から運動を行い、足腰を鍛える