重篤な災害の発生前には、軽微なものを含めると数百件〜の事故が発生しています。ハインリッヒは「1 : 29 : 300」とそれを表し、同様の研究をおこなったバードは「1 : 10 : 30 : 600 [1件の廃失:10件の傷害:30件の物損のみの事故:600件の傷害も物損もない事故(ヒヤリハット)]の法則」が成立するとしています。

大きな事故を起こさないために最も重要なことは、傷害や物損もないような小さな事故を分析・検討することにより、実害がでる事故を未然に防ぐことです。まずは不安全行動のパターンを理解して安全な現場づくりをしていきましょう。

不安全行動のパターンを理解する

どのような職場にも事故や危険はついてきます。しかし、その危険の芽を見つけ出し優先順位をつけて防止対策を講じることで、災害の発生を防ぐことは可能です。代表的な不安全行動を以下に紹介します。

①作業上の危険に対する知識不足による不安全行動

「危険に対する知識」には、自分の作業を遂行するために必要な技術的知識と、作業に関係する危険とその防護方法の知識の2種類があります。これらの知識が不足していることが不安全行動につながります。

②安全に作業を遂行する技能未熟による不安全行動

仕事に必要な技能を習得し、経験を積んでいくことでムリ・ムラ・ムダのない作業を行うことが可能となります。その結果として作業効率の向上とともに不安全行動の抑止効果も高まります。

③安全に対する態度不良(意欲不足)による不安全行動

不安全行動の中でも最も多いのがこのパターンです。危険の知識があり、安全ルールが定められていることも理解しているが、面倒くさがってルールを守らない。あるいは「自分は慣れているから事故にはあわない」という根拠のない自信により引き起こされる不安全行動です。

④人間の特性としてのエラーによる不安全行動

「いつもやっている、いつも出来ていた」のに不注意等により予期せぬエラーを発生させてしまうことなどを、ヒューマンエラーと言います。人間はエラーを起こす生き物です。どれだけ作業行動に自信があったとしても「自分もエラーを起こしてしまう可能性がある」ことを念頭に置いておくことは大変重要です。

不都合や不具合があれば作業標準を変更していく

これらの不安全行動を回避するため、現場単位で各種の教育が実施され、その現場にあった作業標準が作成されていきます。まずは、各個人が与えられた作業標準を遵守して安全作業に努めます。

ただ、作業標準通りに実際に作業をしたうえで不都合を感じたり不具合があった場合には、職場の管理者に報告相談をしたうえで作業標準を更新して改善をしていくことも、安全な現場づくりに欠かせません。