点検は的確・厳正に

職場の設備や機械等は、納期や時間の経過とともに消耗や傷、ゆるみ等が生じて不安全な状態になっていき、それが原因で事故や災害を招いてしまうことが少なくありません。
設備や機械等について定期点検や作業前点検などを的確に実施するように法律においても厳しく定められています。点検の実施にあたっては、特に次の5つの項目をしっかりと守りましょう。

①点検は、だれが、いつ、どのように実施するかを決定し、点検作業を省略したり、手抜きをしない。
②点検台帳などを作成し、チェック漏れがないように留意する
③点検の方法や判定が点検者によりバラつきが出ないよう、点検基準を定めて実施する
④点検結果に基づく処置はただちに行う。すぐに処置を行うことが出来ない場合には応急処置を施した上で、関係者に周知をする
⑤「なぜ不安全な状態や行動になったのか」原因を究明して対策を検討する

「作業開始点検」を確実に行う

朝、工場で製品を出荷するため、一般的な帯ベルトで荷物の玉掛けを行い、クレーンで吊り上げて移動をしていたところ、突然帯ベルトが切れて荷物が落下し、下の通路にいた作業者が重症を負う災害がありました。

帯ベルトが切れた原因は、前日の昼食時に現場で食事をしていた作業者が弁当のマヨネーズをベルトの上に落としそのまま帰宅。その夜にネズミがベルトをかじって損傷していたが、玉掛け作業者が点検を怠ったために発生した事故でした。

玉掛け用具に限らず、点検を行う設備や機械、機器等は、その日の作業開始前に必ず点検を行うことが関係法令上で義務付けられています。しかし、毎日毎回のことで、ついつい形式的になってしまったり「前回まで大丈夫だったから問題ないだろう」という気持ちから、点検を省略・手抜きになりがちです。その結果、今回のような思わぬ事故・災害に見舞われることになります。作業開始の点検は、マンネリで形式的になりがちです。必ず的確に実施するように仕組み化して習慣づけることが重要です。

「作業終了・終業前」の点検

2019年の春、横浜市の市営地下鉄ブルーラインの下飯田駅近くで午前5時20分頃、乗客190名を乗せた6両編成の始発列車が走り始めてすぐに、線路上の障害物に乗り上げて5両目までが脱線する事故が発生しました。

脱線の原因は、前日の線路上での点検作業後、作業員が金属器具を線路から外すのを忘れてしまい、列車が器具の上に乗り上げて脱線してしまいました。
また、全国の病院施設においても患者への手術時に使用した器具を患者の体の中に置き忘れてしまう事故は後を絶ちません。

作業終了後や就業後などは気持ちが緩みやすく、「早く帰ってゆっくりしたい」などの気持ちが出て来やすく、終了点検がおろそかになったり、忘れものや作業手順の省略などが起こりがちです。
作業終了時には、扱った器具を確認し、しっかりと手入れをして所定の場所に戻す。機械のスイッチ状態や火気の始末等は指差し呼称などで確認を徹底するなど、作業の終了時や就業後の安全衛生点検はしっかりと行うことが求められています。