自然災害の予測と対策

例年、全国各地では突発的な豪雨や地震などの自然災害が発生しています。2020年6月に発生した線状降雨帯による豪雨は、熊本をはじめとした九州各県、ひいては近畿地方や長野県などの中部地方にも大きな災害をもたらしました。特に熊本県では90名を超える死傷者が発生したと記録されています。

近年、地球温暖化などの影響により、気象災害の頻発と規模の拡大が問題視されています。これらの災害は、道路や電気などの都市インフラの機能を停止させ、工場や建設現場にも大きな影響を与えます。

現場における地震や風水災害に対しての基本対策としては、まず人命の安全を第一に考えるとともに、日頃から設備や機械材料などの安全確保、職場の3S(整理・整頓・清掃)を徹底して行います。また、倒壊や浸水被害等については復旧手順をあらかじめ決めておくべきでしょう。

防災対策や緊急時の処置について、現場で十分に話し合い現場の防災対策に反映させていくことが重要です。

予期せぬ災害等による緊急・応急対応作業での安全衛生

自然災害などで、作業設備等の修理や手直し作業が発生することがあります。
実は事故や災害の多くは、非定常作業の際に発生することが非常に多いとされています。とくにイレギュラーな修理や手直し作業が発生するケースでは緊急性が求められることが多いため、安全対策がおろそかになり二次災害等に発展してしまうことが少なくありません。修理や手直し作業を行う際は、次の6つの事項について注意を払いましょう。

①修理等の作業にどんな危険・有害な要因があるかを想定して必要な措置を事前に行っておく
②これから行う修理や手直し作業について、あらかじめ手順を決め段取りを組んでおく
③修理等に必要な工具・用具、消火器などの緊急用器具、保護具、表示類を準備する
④電源やバルブなどは、表示・施錠などで誤操作防止措置を行う
⑤修理等の作業が終わったら、安全装置やカバーなどを元通りにし3Sをきちんと行う
⑥修理や手直し後の運転や使用はトラブルを想定して慎重に行う

異常に気づいたら直ちに処置を行う

現場の設備や人の動作などが普段と異なり「おかしい、変だな」などと違和感があったら直ちに上長に報告し適切な処置・対策を実施することが重要です。

数年前、JR山手線の神田ー秋葉原間で、線路脇に設置してあった高さ7メートルの支柱の一部が倒壊して線路を塞いでいるのを、並行する京浜東北線の運転手が気づいて通報したため、危機一髪で大惨事を逃れる事故がありました。

この支柱の異常は2日前時点で現場の担当者たちは気づいていましたが「すぐには倒れない」と考えて、後日予定されている他の工事の際に一緒にこの支柱の工事を行うことにしていました。その後も通りかかった電車の運転手が「支柱が傾いている」と通報してきましたが、工事担当部署では、工事の予定が入っているから心配ないと答えていました。

「危険な状態も事故のうち」と言います。人の不安全な動作も同様に、設備等に関しても「危ないな」と思ったことは事故や災害と同様に考えて、直ちに何らかの処置を講じるべきです。今回のケースで言えば最低でもロープで支柱を支えておくなどの応急処置を施し、予定された工事日に本格処置を行うなどの緊急対策を講じておくことが必要だったと考えられます。