職場の安全衛生と決まり

職場の安全衛生・保安については国が定めた法律や規則などの「決まり」が多数存在します。その他にも事業所や職場で定めた安全衛生規定や基準、作業手順、各種ルールなども個別に存在しています。
特に事業所や職場で定めている「決まり」の多くは、過去に発生した事故や災害を教訓とした事項や、職場独特の設備や作業方法による事故や災害の防止を目的として具体的に定められたものが多くあります。これらの「決まり」をみんなで守るために必要なことは、作業をする全員が「決まり」が定められた理由をよく理解し、しっかりと守られるように、設備や作業方法の見直し、改善などを進めることです。なお、「決まり」がなかなか守られない場合には放置をすることなく、みんなで「決まりが守られない理由」について話し合い、検討をして工夫をしながら安全確保をしていく必要があります。

作業主任者の任務と責任

職場の危険・有害作業など一定の作業では、その作業について経験・技術・知識を持った作業主任者を選任して、その指揮の下で行うよう法令で定められています。労働安全衛生法では、現在30種類以上の業務について「作業主任者」の制度が決められていますが、ほかに消防関係法令や高圧ガス保安法等でも作業主任者等の選任が定められています。労働安全衛生法では作業主任者の職務として次の5つの事項が定められています。

①作業の方法や手順を決定すること
②設備や機械、環境等の事前点検を行うこと
③工具や用具等を点検すること
④保護具等の使用状況を監視すること
⑤その他安全衛生確保の上で直接必要な事項

作業主任者以外の者は、作業主任者の職務を理解して指示等に従い、作業主任者の業務に協力し遂行していく責任と義務があります。

事業者の安全衛生責務

労働安全衛生法および規則では、多くの条文において「事業者は◯◯◯をしなければならない」などというように、事業者に労働災害防止の措置等を義務付けており、違反した場合は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処するなどとしています。また事業者は、民法上の債務不履行責任、不法行為責任等が問われて損害賠償責任が生じる責務を負っています。

「事業者」の定義は株式会社のような法人である場合には、会社役員が組織的に災害防止の管理・活動を実施することとされていますが、この場合、安全管理者や衛生管理者、現場の管理・監督者や各種作業主任者も、「事業者」とみなされ、罰則が適用される対象となる場合もあります。

また、労働安全衛生法では「労働者は事業者が実施する必要な安全衛生措置を守る義務」を規定しています。職場の災害防止の責務は労使双方にあることを労働安全衛生法上では明示されています。

安全衛生委員会の役割

労働災害の発生原因は多岐に渡ります。効果的に安全衛生管理活動を進めて行くには、職制を通じた一方的な指示だけでなく、現場を熟知している作業者の意見や情報などを十分に把握し、対策を具体的に反映していくことが不可欠です。このため、労働安全衛生法では、労使による安全衛生委員会等の設置を義務付け、次のような基本的な事項の調査・審議等の実施を行うこととされています。

①労働者の危険を防止するための基本となる対策に関すること
②労働災害の原因および再発防止対策に関すること
③安全衛生の規定の作成に関すること
④リスクアセスメントおよびその結果に基づく措置に関連すること
⑤OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)に関すること
⑥安全衛生教育の実施計画の作成に関すること

安全衛生委員会は職場の安全活動にしっかりと反映させることが重要な課題となります。