事故の原因となる不注意の原因究明と改善

事故災害の原因の一つとされている「作業者の不注意」を防ぐためには、なぜ不注意な状態になってしまうのか、について原因を究明する必要があります。
工場や建設現場において、重大な事故や災害が発生するごとに、マスコミ等では「作業者の不注意が招いた不安全な行動が原因」などと報じています。しかし、実際にはこれらの事故や災害の裏に「ヒヤリハット」などを含め、次のような事が潜んでいることが多くあります。

・不注意という言葉は結果であり、不注意にはそれぞれ原因がある
・不注意には、錯視や錯覚、知能(知識)教育の不備・不足による失敗があり、これを当人の不注意とは言えない
・注意力には限界がある。人は、緊張を長い時間持続することは不可能である

事故や災害の原因を「当該作業者による不注意」だけで片付けてしまうことなく、なぜ不注意な状況が生まれてしまったのか、その要因をしっかりと分析してリスクを正当に評価し、万が一不注意な行動となってしまっても、事故や災害に結びつかないような適切な対策を実行することが重要です。

不注意やミスが起こる8つのケース

作業中に、つい不注意になったりミスをおかしてしまうタイミングについては次の8つの状態の時に発生しがちだと言われています。

①作業が多忙・切迫しているときや急いでいる時。また、緊急事態が発生した時など

②心身が疲労していたり、同じ作業を反復して集中力が切れているような時

③作業内容が複雑すぎて、作業手順を覚えることが本人の作業能力を超えているような時

④作業の指示の仕方や処理の仕方が、その都度変化していたり、あいまいであるような時

⑤予定どおり、手順どおりに作業をしているときに別の作業を指示された時

⑥工程の一部や作業の変更を急に指示されるなど、平常と対応が変わる時

⑦作業の指示が不明確だったり、作業対象の物や状態が不明確でわかりにくい時

⑧知識・技量の不足や、作業手順を教えられていなかったり、経験をしたことがない作業の時

このような不注意やミスの要因に関して作業に関わる全員が認識し、注意をし合うことが重要です。

「うっかりミス」の事故・災害を防止するには

操作の確認を忘れてしまったり、意図なく作業手順を飛ばしてしまったりする「うっかりミス」を防止する意識は、事故や災害を防ぐうえでも非常に重要です。

とある中学校で作業係員がプールに水を貯める作業を行っていた際、排水バルブが空いたままの状態で給水バルブを開けてそのまま放置。給水された水はそのまま排水溝から流れ続けて水道料金が196万円の請求となる事例がありました。

命に関わったり、怪我などの事故となってはいませんが、この事例を笑ってもいられません。家庭でもお風呂の栓を占めないままでお湯を張っていて、そのままお湯が垂れ流しになっていたなど、身近でも「うっかりミス」は多数潜んでいます。この「うっかりミス」が原因で大事故、大災害になる例もたくさん報告されています。

これら「うっかりミス」による事故をなくすには、「人の行動や確認などには必ずミスが生じる」ことを前提に、作業手順や確認項目を設計する必要があります。そのうえで、マニュアルを作成し作業者には周知・徹底を図ることで「うっかりミス」を防ぐことができます。