墜落・転落災害の防止について

死亡事故で高い割合を占めている墜落・転落災害は例年、全死亡災害の約25%超にのぼります。特に建設業においては約45%を占めると統計が発表されています。この墜落・転落災害の防止は、最も重要な安全テーマのひとつと言えるでしょう。

これら墜落・転落災害を防止するためには、次の8つの事項を徹底することが重要です。

①作業前には、手すり、開口部のふた、高所の作業床、安全ネット等の設備や保護帽、ハーネス等の点検を必ず行う

②高所での昇降は定められた設備等を使用して行う

③作業に適した服装(作業着、履物)保護具(保護帽、ハーネス)を装着し作業を行う

④高所作業における作業手順をあらかじめ決めて、決められた手順は確実に実行する

⑤作業者の経験、年齢および健康状態を十分に考慮して決して無理をしない

⑥高所の作業床や通路・階段には十分な照明設備を設置する

⑦強風、大雨、大雪等の悪天候時には高所作業を中止する

⑧脚立やはしごなどは、規格に合ったものを正しく使用する

高さ1m前後の作業場から墜落・転落について

労働安全衛生規則では、墜落・転落のおそれがある高さ2m以上の場所での作業は、法律で定めた墜落防止対策を行うように規定されています。ただ、近年では1m前後の高さでも、高齢作業者を中心に、次の例のような墜落・転落による死亡や重篤な災害が報告されています。

事故例

・塗装作業ではしごを降りる際、踏み外して1m下の側溝に転落し、頭部を強打して死亡

・高さ1mのトラックの荷台で玉掛け作業中、荷台から転落して頭部を強打し、後遺症が残る

・室内の照明道具を清掃中、高さ1mの脚立を踏み外し頚椎損傷で死亡

・高さ80cmのコンベヤーの上で荷扱い中、急にコンベヤーが作動し床に転落して死亡

これらの災害事故に共通していることは、本人も周りの作業者も、「高所作業」であることの認識が薄く、墜落・転落防止措置対策が不十分な状態で作業を行ったことです。1mにも満たない場所での作業でも「高所作業=危険」である認識を持ち安全対策を怠らないことが重要です。

危険性を察知する想定力を高める

作業場で大事故や災害などが発生すると、関係者は口を揃えて「事故・災害の危険性を想定することが出来なかった」と言い訳を繰り返すことがあります。
この場合の想定とは、現場作業者および設備等の計画・製作・運転利用者などの限られた集団における想定に限定されることが多くあります。これでは、危険察知に最も重要な「客観的・科学的・歴史的」に見て、その作業現場で起こりうる危険を網羅的に想定したとはいえません。

作業に関わる者全員が「想定外の原因によって事故が発生した」ということがないように、予測される危険因子については、内外の事故や災害事例を参照し、日常のリスクアセスメントを活用して「想定の深さや範囲」を広げ、確実な安全対策を講じることが非常に重要です。

しかし、どれだけ危険作業を想定していても、なおも想定外の事故が起きることがあります。そんな時に頼りになるのは「対応力」です。事前に災害を想定することを怠らず常に心構えをしておくことで、緊急時に適切かつ柔軟な対応ができるようになります。