安全衛生法に基づいた報告義務には、定期的な報告とあらかじめ定められている事由に該当する場合に行う報告があります。いずれの報告についても労働基準行政の実行にあたり、事業者が法令を遵守しているか、もしくは全国の労働災害他の把握を目的とし、報告義務を課しています。

報告義務に関する要点

■定められた報告を怠る、または虚偽報告をおこなった場合には報告義務違反となります。

■派遣労働者に関する労働者死傷病報告については、派遣元および派遣先の双方に報告を提出する義務が生じます。

■安衛則96条に規定されている事故が発生した場合については、人災の有無を問わず必ず報告することが義務付けられています。

主な報告義務事案について

報告が必要とされる主な事案は以下の通りです。

①一定の者を選任または解任したとき(総括安全衛生管理者ほか)
②事故等の報告(事故報告、労働者死傷病報告など)
③機械等の設置または休止(ボイラー則、クレーン則、ゴンドラ則ほか)
④健康診断結果報告(定期健康診断結果報告、特殊健康診断結果報告ほか)
⑤その他報告(特定元方事業開始報告、有害物ばく露報告ほか)

ヒント

一人親方の災害に関する報告等について

労働災害の対象者が「一人親方」であり、事業者と直接的な雇用関係にないことが明確に示せる場合には、労働者死傷病報告の提出義務はないとされています。

なお、一人親方に関しては、労働者を使用することなく自らが働く個人事業主のことを言い、労災保険の補償対象外です。一人親方自身による特別加入がなされていない場合については労災保険法による補償は受けられないものとなっています。このため、万が一のトラブルを回避する意味もこめて、一人親方に業務委託する際には契約締結の段階で特別加入の有無を確認することが必要です。

報告書類の様式について

報告書類は定型様式および、任意様式どちらも認められています。定型様式については、厚生労働省のホームページからダウンロードが可能となっています。

提出者の名義に関するルール

安衛法に基づいての報告、届出、検査の申請については、通常の活動として支店、事業場等の単位で処理している事項を内容とします。なお提出者名義については、当該事業場に係る職務権限が当該支店、作業場に委譲されている場合は、当該事業者名を記載した上で、当該支店、事業場の長の職および氏名で行ってかまいません。

報告提出の期限について

正当な、もしくは合理的な理由に基づいてやむを得ず遅滞する場合を除き、速やかに報告提出しなければなりません。報告が正当な理由なく遅れた場合には、違法とされ処分される可能性があります。

虚偽報告に関する対処等

報告内容に虚偽があった場合には、それ自体が違反となります。(安衛法100)労働災害の発生に関し、その発生事実を隠蔽をするため故意に労働者私傷病報告を提出しないものおよび虚偽の内容を記載して提出するものを「労災かくし」といいます。

これまで、労災かくしにより送検された事案は多数あります。労災かくしは、被災者への迅速・適正な補償を損なうのみならず労働災害の再発防止対策を推進する観点においても重大な妨げとなります。労災保険の適正な運営に支障を及ぼすため、労働基準監督機関は当該事案および死傷病報告未提出事案についは厳正に対処するとしています。

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