今回は現場作業の中に隠れたり潜んでいる潜在的な危険を予知・予測して日々安全な行動を行うための情報をお送りします。

危機管理能力とは

昔、宮本武蔵と並んで有名な塚原卜伝(つかはらぼくでん)という剣豪がいました。卜伝の優秀な弟子の一人が、町中で馬の後ろを通っていたところ、急に馬が後ろ足を跳ね上げました。しかしそのとき、優秀な弟子はひらりと身をかわして馬に蹴られずに済みました。これを見ていた人たちは「さすが卜伝の弟子だ!」と関心して彼をたたえたと言います。

しかし、これを聞いた卜伝は機嫌を悪くし、こう言いました「馬は後ろ足で蹴るものだということを忘れ、馬の背後に近づいた事が修行不足を証明している。本物の剣の達人は、危険を予知しそもそも馬の背後に近づくことはない」と弟子に伝えたと言います。

塚原卜伝が高名な剣術家になったのは、並外れた危機管理能力の高さが大きく関係していると言われています。事実、卜伝は止むを得ない戦闘以外は敵と剣を交えることはなく「戦わずして勝つ」という有名な言葉も残しています。

私達も卜伝に習い、危機管理予知行動やリスクアセスメントを通じて危機管理能力を高め、事故や災害を防止していく必要があります。

異常状態は迅速に発見して措置を行う

職場の設備や環境、また同僚などの状態に常に気を配り異常が認められた場合は速やかに措置を行いましょう。
職場の事故や災害の多くは、なんの前触れもなく突然起こるわけではありません。目立った異常ではない「潜在危険状態」を経て、徐々に危険が表面化するプロセスをたどり、事故へと発展していきます。

機械・設備および環境等の異常状態の例としては、次のようなことがあります。

①機械・設備等の非常に小さなトラブル
②安全装置やカバー、囲い、手すりなどの不備
③機械などの異常音や振動および加熱
④ガスや蒸気、粉塵等のごく少量の漏洩
⑤4S(整理・整頓・清潔・清掃)がなされていない環境

また、作業者の態度や行動等の異常状態の例としては、次のような3点が代表的です。

①意識的・無意識的問わず不安全な状態でそのまま作業を行っている
②決められた安全衛生の規定や作業手順を守らない
③心身の健康状態が悪い状態で、我慢・無理に作業を行っている

などがあります。これらの状況が認められた場合は速やかに適切な処置を行う必要があります。

長期連休後の立ち上げ作業における危機管理

連休後の安全衛生管理・活動と、連休明けの立ち上げ作業はトラブルや災害が発生する可能性が通常時の何倍にもなります。立ち上げ作業にとりかかる際には「起こり得る災害を事前に想定しておく」ことが最も重要です。とくに、5月の連休明けの時期については、新人や現場への転入者などが作業に慣れはじめてきている時期ですので、より一層油断は禁物です。

また、この時期は新しい環境に順応できず「5月病」などといわれる精神的に安定しない症状を発症することがあります。経験を積んでいる作業者は、これらに注意して同僚を見守り、指導をする必要があります。

長期連休明けの「立ち上げ作業」を実施するにあたっては、次の4つの項目について注意しましょう

①これから行う作業の危険性について危険予知を十分に行い、必要な対策を検討し作業実施する
②機械や設備等について定められた作業前点検を手抜きなく行う
③少しでも異常等が認められた場合には、速やかに上長に報告をして指示を受ける
④部下や同僚の動きに目を配り、不安全な行動があれば注意を行い行動の是正をさせる